マーシャル・ガンツ博士講演会「新しいムーブメントの形」報告 講演録後半

嘉村:そろそろ後半を始めますので、席にお戻り下さい。 日本から3事例、日本でもムーブメントが起きていることをガンツ博士にも知っていただくのと、博士の観点からコメントをいただこうかなという主旨で後半を進めていきたいと思います。コミュニティ・オーガナイゼイション・ジャパンのメンバーの皆さんと今回の企画を話した時に、京都でいくつかムーブメントが起こっていることから会場を京都にしようということになりました。1つ目の団体は京都市未来まちづくり100人委員会。じつはわたしたち特定非営利活動法人場とつながりラボhome'sviも7年ほど前に事務局を務めさせていただいて、今はそのバトンをきょうとNPOセンターさんにお渡ししています。まずは京都市未来まちづくり100人委員会の話を聞いていただくところから始めていきたいと思います。それではよろしくお願いします。

(事例1:京都市未来まちづくり100人委員会)

野池: 皆さん、こんにちわ。今ご紹介にいただきましたきょうとNPOセンターで事務局をしております野池と申します。10分ぐらいで話すようにと言われていて、到底無理なんですけどx、概要をお伝えいたします。お手元にチラシをご用意しているかと思います。これを見ながら話を聞いてください。3部構成を予定しています。まずきょうとNPOセンターについて。次に百人委員会にどうして取り組んでいるかということ、これは篠原さんにバトンを渡して実際にどういう活動をしているのかご説明します。きょうとNPOセンター、NPOを支援するNPOとして1998年から活動をスタートして今年16年になります。日本における市民団体を増やしていこうということで活動してきました。活動基盤作りの一環として、NPOのための放送局、コミュニティFMを立ち上げたりしています。NPOは常に資金の問題を抱えているので、寄付を集めてNPOを支援する財団を設立したりしています。NPOの人材育成や資金調達、情報発信をずっと16年間やってきました。ある程度NPOの数は増えました。京都だけで見ても1300ほどあります。全国でも5万法人ほどある。じゃあ活動内容はどうか。活動数は増えているけど、普通の人と交わる接点が少ない。なにか特別な人が特別なことをやっている感じ、という問題意識が出てきました。数は増えたんだけど、多くの人たちと一緒に何かをするというレベルまでにはまだまだ至っていない、と。1300法人、各団体に10人の関係者がいたとしても13000人しか日常的に活動に関わっていない。京都市には147万人が住んでいらっしゃいますけれども、大きな運動にしたりムーブメントにしたりするにはどうしたらいいのかということを常に悩んでいました。その中で、京都市未来まちづくり100人委員会という活動に出会いました。嘉村さんたちが京都市の皆さんとやっていたことを引き継ぐ形で活動をさせてもらうようになりました。未来の町づくりについて市民が関わる仕組みを京都市は用意して、毎年100名近くの人が議論の輪に入って、活動自体にも参加するということを今一生懸命やっています。ガンツ博士がおっしゃっていたように、リーダーシップをたくさん育てていくためにもこの100人委員会という場自体が、ひとり一人の市民がじぶんの問題意識から集まって、チームを作って活動をする流れで6年ほどになりますので、わたしたちの活動が徐々に広がってきているということになります。

この100人委員会に関わっていらっしゃる7・8割は「今までそんな市民活動なんてしたことがない」「町づくりの活動に参加したことなんてない」という方々です。実際のメンバー構成を見ても、10代から70代までいらっしゃいます。特徴的なのは、こういう場作りをしようとするとどうしても高齢者の方々がたくさん集まりがちになりますけれども、100人委員会の場合は10代・20代の人がたくさんいらっしゃるのが特徴です。しかも今までそんなことしたことなかったけれども、どうも京都には100人委員会というものがあるらしいぞ、と。よく分かんないけど、みんな楽しそうに色んな活動をしているみたいだ。ということが広まってまして。じゃあ、その場を使ってじぶんが考えている街の問題を解決したい!という実践の場になっています。NPOをやっている方も8%ほどおりますが、普段は企業で働いている方や自営業をされている方が35%ほど。学生も20%近くいます。京都市も行政の立場から市民活動を積極的に一緒にやっていく方針をとっていますので、京都市職員の方々も22%入っておられます。

100人委員会の取り組みは京都市内で色々と展開されているわけですが、悩ましいのはこうした活動を既存のNPO活動や行政活動とどうやってつなげていくか、ということです。次のステップはこうした連携を強化していって、取り組みの幅を広げていきたいと思います。この6年間でわたしたちの活動は京都「市」で展開されていたものが、「各区」へと広がっています。地域にどんどん広がっていることはとても素晴らしいことだと思いますし、これがひとつの文化や習慣になればいいなと思っています。あえて100人委員会と名前を言わなくても活動が自然と広がっていければいいなと。もう、10分ですかね?まだいいですか?はい。

100人委員会は毎月1回集まりながら2年間のスパンで各種活動しています。先ほどガンツ博士もおっしゃっていた関係作り、まったく知らない人が集まって行動するわけですから、活動の初めの段階は関係作りに時間を使っています。それぞれの人となり、問題意識を共有するところからスタートします。そして、この街の問題は何か、この街でこんなのがあったらいいな、色々とアイデアが出てまいります。お手元にあるチラシにも書いてありますが、「こんなのほっとけない」と思う12のテーマが1年間くらいかけて決まって来ました。構想が見えてきたんですね。12月20日にみやこめっせという京都市の施設で市民の皆さんが「こんなことをしてはどうか?」ということを市民の皆さんに問うということをやります。京都の方は関係作りに興味のある方が多いですので、ぜひご参加ください。その構想を市民の皆さんに問うて、色々なフィードバックをもらって、行動するための計画作りをしていきます。修了生の方々も600名を超えて、地域に戻って活動を展開される方もいれば、この活動を期にNPO法人をつくって組織化して活動する事例も出てきています。京都市営地下鉄をもっと乗りやすいものにする活動をしているところもあれば、これからお話しいただく篠原さんが関わっている子育てに関する活動をしているところもあります。では篠原さんにバトンを渡します。

篠原: みなさん、こんばんは。1期から3期の100人委員会の委員をしておりました篠原と申します。今は100人委員会から派生した子育て支援の団体とこの場を主催しているhvのスタッフをいています。わたしもガンツ博士のワークショプを受けたので、そこで勉強したことを使いながら説明していきたいと思います。

わたしは小さな頃、封建的な父の影響で言いたいことが言えない子供時代を過ごしました。進学も就職も親の言いなりでした。わたしの本題として、どうしても人の話を遮ってしまったり、身近な人を理論攻めにしてしまって言いたいことを言わせない体験をずっとして大人になりました。皆さんにも同じような体験はないでしょうか?もし言いたいことややりたいことをありのまま受け止められることができたら、関係性がもっと良くなっただろうなと思ったことはないでしょうか?6年前、わたしが36才、こどもが1才になったところで100人委員会の委員になりました。

活動を一切したことがないような人が集まっていたんですが、わたしもその一人で。170人くらい委員がいる中で知っている人は誰もいませんでした。わたしはその100人委員会でありのままを受け止めてもらう経験をしました。ひとつはこどもが1才で託児の時期だったんですが、委員会に参加中にずっと泣いていました。すると委員の一人が「街というのは大人だけじゃなくて、こどももいるので、一緒に居ていいじゃない」と言ってもらった。もうひとつは今やっている仕事につながるんですけれども、ありのままを伝え受け止める対話というものを100人委員会で体験することができたんです。

子育て支援をしていると先ほど申しましたが、妊娠から出産、子育てをしているママやパパの支援をしています。わたしが妊娠している時に、席を譲ってもらえないなとか、おっぱいをあげられる場所がないなとか、おむつを替えるスペースがないなとか。いっぱい課題がありました。新快速に乗っていた時に優先席の近くに立っていて、それを見かねた女性が座っていた人にたいして「彼女に席を譲ってあげてくれませんか」と言ってくださったこともありました。わたしのように子育てに悩む人はたくさんいるはずなのになぜ世の中は変わらないんだろうと思いました。思ったのは、高齢者福祉と違って子育て問題は、こどもの成長に会わせて親が抱える問題の質も変わっていくという点でした。このままでは毎年京都市で産まれている12,000人の赤ちゃんのママやパパたちのお困りごとは何も解決しないじゃないかと思いました。それで、4年前から100人委員会で子育ての活動をしています。子供専用トイレを設けるよう施設にお願いしています。

子育てをしているとお母さんは野性的な部分が出てきて、「この子を敵から守らないといけない」と思いあまって、旦那さんを敵視することもあります。そんなことママにならないと分からないことですが、そういうこともあるんだと知ってもらう機会もつくっていきたいなと思っています。その機会として12月20日、100人委員会の構想発表会をやるみやこめっせの近くの京都市岡崎いきいき市民活動センターで「にこわくフェスティバル2014」というのをやります。みなさんどうぞいらしてください。もしご興味をもたれたらわたしたちの活動にも参加してください。

野池: 今お話しいただいたような活動が増えてきています。現時点では12個ほど。「市民活動がなかなか広がっていかない」という問題意識が最初にありましたけれども、機会や場面をたくさんつくることで、じぶんが感じている課題や問題が人ごとではないと気がつく。ガンツ博士は「共通の価値観をもつことが大事だ」とおっしゃっていましたけれども、一緒に街のことを考えたり行動する機会をつくっていくことが、問題解決の端緒になるんじゃないかと思います。12月20日にイベントを開催しますので、ぜひお越しください。ありがとうございました。

(会場:拍手)

嘉村: ありがとうございました。わたしも最初の頃に100人委員会に関わっていて、今こうして活動が広がっていることをとても嬉しく思います。20日もたくさんの人が集まると思いますので、みなさんもご参加ください。

では2組目の発表をお願いします。NPO法人スマイルスタイル、個人的には今関西で一番熱い若者たちだと思っています。若者らしいムーブメントの作り方を話してもらえればと思っています。では、よろしくお願いします。

(事例2:NPO法人スマイルスタイル) 塩山: ご紹介にあずかりましたNPO法人スマイルスタイルの塩山と申します。よろしくお願いします。通称はスマスタと呼ばれております。どういう未来を目指しているのか、そこに向けてどういうアプローチをしているのか、その中でどんな気づきや課題があるのかをご説明します。目指す未来、目的は「日本における若者の貧困・格差を解消する」ことです。そのためにとっているアプローチは教育格差、非正規雇用やそれと密接に関わり合いのあるワーキングプアなど、当たり前に生きていくことを邪魔する環境を取り除いていく。生きていくためのモチベーションを生み出すために、「食っていくための労働(ricework)」から「生きていくための労働(lifework)」に変えていく環境をつくっていきたいなと。キャリア、学歴の有無に関係なく人生に希望をもって結婚して、家庭をもって、こどもも育てられるようなインフラをつくりたいんですね。

行政も企業も働く環境の改善に動いていますが、働きたい人とのマッチングは上手くいっていません。例えば行政が運営しているハローワークは職業訓練などの教育機関と連携しながら雇用の斡旋をしていますが、十分に機能しているとは言えない。そこでぼくたちはハローライフというモノをつくって間に立って、両者の言い分や活動をチューニングしています。民間の職業安定所、とぼくらは言っています。これは大阪の靭公園、ニューヨークのセントラルパークみたいなところなんですがx、の横にあります。

1階から4階まであって、建物に入りますとCHASHITSU for workerっていうカフェがあります。本・漫画・雑誌など、様々なテーマのものが現時点で3000冊ほどあります。これは自由でご利用いただけます。2階に上がっていただくとWORK INFORMATION、働き方に関する支援や情報提供を行なっています。イベントやギャラリーを展示するスペースも建物中にはありまして、ギャラリーといっても去年だと山崎亮さんや福祉関係だったり、色んなテーマに基づいて展示を行っています。4階にあがるとCHASHITSU FACTORY、大阪にいる職人さんがいて、1階で提供する和菓子を作っています。

こういったもので本来行政がメインでやる労働の需要と供給の調整をしていきます。ここで終わらせるのではなくて全国に展開できるようなムーブメントをつくれないかということで2011年度からhvの嘉村賢州さんに入っていただいて大阪を変える100人会議というものをつくりました。そこで色んな課題が見えてきました。例えば働きたいのに働けない人。話を聞いてみると書類選考でよく落ちる。じゃあ、履歴書のいらない、面接も省いた採用を「超就活」と名付けてやってみようと2012年度から展開してみたりしています。在阪企業10社に参画いただいて25名が参加、うち15名が採用になりました。このように現場の声をキャッチして、それにあった解決策を提示して展開していく。それをニュースで配信してメディアを巻き込みながら、参画企業を増やしていっています。この活動が原点になって先ほどご紹介したハローライフが去年の5月に完成しました。まだ1年半なので、できるかぎりマンツーマンで、伴走しながら支援できるように登録制にしました。まだまだ数は少ないですが、500名ほどが登録して、うち40名ほどが就職にこぎ着けています。

ムーブメントをおこすには地域やじぶんたちに関わる資源をどうレバレッジしていくかが大事だと考えていて、一番参考にしたのはJリーグなんですが。プロの公共機関をつくっていこうと。理念先行・地域密着型のハローワークを目指していて、現時点では大阪府から半分、企業さんから半分の収益を得ています。

今大きな方向転換をしていましして、その転換点になったのが日本センチュリー交響楽団と一緒に行なった3ヶ月間のワークショプです。働くということについて曲をつくりました。3ヶ月後にJR大阪駅の広場で曲を発表したんですね。ワークショップをとおして思ったことは、カウンセリングや相談は行政の中にもいっぱいあるんだけれど、私たちの活動を差別化していくためには個別のカウンセリングなんかをなくしていって、和菓子をつくる、音楽をつくる、みたいな。動いていくことでなにか景観や物の見方が変わっていくんではないかと。和菓子ワークショップからは一期生10名のうち半分が、音楽ワークショップについても12名中半分が就職につながっています。相談者にたいして「働け、働け」とは言わないけれど、何かモノをつくったりワークショップに参加してもらう中から何か気づきを得てもらうようなスタイルに今変えてまして。ちょうど転換点にいます。

最終的にはJリーグがJ1からJ3まであるように層を分厚くする。公共分野は利益がなかなか出しにくいんですけれども、その地域にとってなくてはならない存在という観点で事業を進めているので、これからは今の活動が持続可能なものとなるようにチームの資源をうまく活用していきたいと考えています。そうすれば行政が1億円で運営しているような事業も行政が半分出して、残り半分は地域や企業が出資できるような形にできないか。今後ノウハウを構築していって全国に同様のムーブメントを起こせればなと考えています。今後の課題は年収80万円でも子育てができるようなインフラを整えていきたいことです。余っている公営住宅や民間物件を有効活用して固定費を0にして、その上でriceworkからlifeworkに転換していって、そういう人たちのコミュニティが出来上がっていければと思います。ありがとうございました。

嘉村: ありがとうございました。(42:00~事務局のお詫びを入れるか) では、3組目の発表に移っていきます。NPOやソーシャルワーカーの活動範囲を広げることに日本はけっこう苦戦しています。企業を巻き込むのが難しい状態に陥っています。企業を巻き込みながら社会変革を起こしている活動例として面白い事例だと思いますので、RELEASE;の紹介をさせていただきます。では、よろしくお願いします。

(事例3:RELEASE;) 桜井: 皆さん、こんばんは。RELEASE;の桜井です。一番初めに皆さんに言いたいのは、ぼくは高校にも行っていなくて、大学にも進まず、そのまま会社をつくった人間でして、師匠らしい師匠がいません。昨日・今日とガンツ先生の講義を受けたので、今日こうして皆さんの前で話すことに少し緊張しています。どんな活動をしているのか、テーマは国境や世代などあらゆるジャンルを越えた共同体として豊かに生きる未来を望み、これまでの文脈を問い合い、学び創造し続けるためのステージです。長いタイトルですが。メインプログラムになっているのがRELEASE;30、under30、30才以下の若者が企業や行政などのセクターを越えて未来を想像し、その未来を実現するためのリソースをじぶんたちの手で生み出していきましょうということをやっています。始まって2年間の活動ですが、関わってくださった方は1年目で837名、2年目で1902名。企業9社、1市町村が参画してくれて、じぶんたちがどんな未来を選びたいのかということを真剣に考えて、必要なビジネスを生み出しています。今年は7つのビジネスが誕生しました。 皆さんに考えていただきたい問いを用意しました。ぼくがこの団体で大事にしていてやろうとしていることは、本来の意味を失っている言葉があるのではということです。例えば、政治、宗教、仕事、教育、大学。どんなイメージをもってますでしょうか。今日はホスト役になるよという学生が来てくれていますのでちょっと聞いてみたいなと思います。あなたにとって宗教とは?

学生: はい。「宗教」と聞くと、大学近くで勧誘活動をしている人たちとうイメージがあって。宗教=悪いもの、というイメージがあります。

桜井: ありがとうございます。目を伏せている学生がだいたいぼくの活動に参加してくれている学生なんですけどx、あなたにとって仕事とは何ですか?

学生: はい。仕事・・・いたい場所ではなくて、着いた途端に返りたくなるもの、と考えています。

桜井: はい。本来の意味を失っている言葉がいっぱいあるなと思っています。たぶん仕事も最初は人の役に立ちたくて始まった取り組み・活動が「仕事」と名前をつけられたはずなのに、今出てきたようなイメージになってしまっているかと思います。他にも宗教や政治というのも、そもそも世の中ってこうしたらいいよね、というところから始まったはずなのにいつの間にか本来の意味を失って、違う文脈だけが残って、みなさんの価値観を形成しているんではないかなと思います。RELEASE;で特に大事にしている価値観は「経済」です。これについても皆さんに考えてほしいことがあります。あなたが暮らしてく中で失いたくないもの、本当に必要な物は何ですか。1分間時間をとってあとで当てますので、3つ4つ頭の中でイメージしてください。はい、では。

参加者: 友達。食べ物。あとは仕事。社会とつながる活動。

桜井: ありがとうございます。もうひとりぐらいいきたいとおもいます。

参加者: 仲間と居場所とつながり。

桜井: ありがとうございます。今あなたが暮らしていく中で失いたくないもの、本当に必要な物を6つ挙げてもらいました。で「それはお金で買えるものですか?交換できるものですか」といつも聞くんですね。今あげてくれたものの中で買えそうなものは居場所と食べ物。それ以外のものは基本的にお金で買えないものだと思います。でも価格がつかないものについてはぼくらは仕事にできないんですよね。経済としてまわらない。でも本当は必要としているのに。誰も仕事として扱わないのが今の経済なんじゃないかなと考えています。それをちゃんと扱うようにして経済を回していこうよ、ということを本当はみんな望んで「経済」という取り組みを始めたんじゃないかなと思います。なのでRELEASE;でやっていることは本当の意味を問い直すこと。

経済(エコノミー)の語源は「家をどう運営するか」というものです。ですが、現在の私たちの経済は必要なものがちゃんと運営されていない。そのことをちゃんと考えてひとつの結果を出していこうとわれわれは活動しています。大体4ヶ月ほど、どの活動も考えつづけます。そこで企業は「わたしたちはなぜこの事業を始めたんだろう」ということを考えます。行政は「その企業にたいして何ができるだろう」ということを考え始めます。そこに集う若者はじぶんたちの仕事をどう捉えていくのか、本当はじぶんたちはどういう未来に行きたいのかというのを考えます。この3者が同時に考える機会というのをわたしたちは提供しています。10個の新しい虹みたいなものが産まれればいいなと思っていて、今年ビジネスを考えた子がこの場に来てくれていますので、話のバトンを渡したいと思います。

参加者: 今年、わたしたちのチームが考えたのは、フィンランドの赤ちゃんボックスを真似して、アイボックスというものをつくりました。京都市三条にあるIKEUCHI ORGANICという企業さんがあって、もともとは今治タオルのひとつだったんですが。メーカー独自の製品を販売しているんですが、製品をつくっていくうえでどうしてもB品が出てしまうんですが、作り手としてはもちろんそんな経済活動に乗せられない製品は作りたくはないわけで。それをどうにかして使えないかと考えました。次の世代を思えば赤ちゃんやそのお母さんってすごい大事な存在で、子育て世帯は教育費等でお金がない状態なので、小さい頃から子供に本物を触れさせられなかったり、社会と上手く関われないという話を聞いていたので、その人たちに「こどもを産んでくれてありがとう」というのを伝えたくて、B品製品を京都市とコラボしてある地域に届ける活動を始めました。

桜井: ありがとうございます。100%オーガニックコットンで、一番最初に赤ちゃんを包みたいっていう想いがきっかけです。オーガニックコットンをこどもの成長とともに使っていってほしいというメッセージを込めて、お母さんたちに贈っています。

じゃあ、なんでこんな活動をやろうと思ったのか。1977年に生まれて、2000年に会社をつくりました。それまでは本当に好き勝手やってまして、とにかくワクワクすることが好きで。新しい世界を見せてもらえるんじゃないかと思ってビジネスを始めたり、洋服をつくったりしてました。その一方で、違和感を感じるものにたいしてはまったく動けなくてですね。大学も行く意味が分からなかったので行きませんでしたし、本当にじぶんの好きなことをやっていました。そうこうするうちに、ビジネスっていうメッセージがアートになるんじゃないかっていうワクワクが内側から湧いてきまして。ある日、「ぼく会社をやります!」とまわりに宣言しました。そしたら、出資が決まったんですね。何をやるかは知らないけれど、とにかくお金を出しますという人たちと出会いまして、ぼくはお金というパワーと出会いました。それから2009年までいわゆる経営者になって、手元にあるお金のパワーとなんとか上手く活かさないといけない。で、ちゃんとスーツにネクタイを着た、いわゆる青年実業家みたいになりました。会社は業績がどんどんと伸びていったんですけど、じぶんがつくった会社なのにいつの間にか組織に使われている状態に陥ってしまいました。

そもそも組織は個人のためにあるはずなのに、なんでぼくが組織に使われているんだろう。要はお金を稼ぐために、仕事をまわすために働くということ。先ほどのガンツ博士の話で言うと、ぼくは一緒につくる仲間をホストの立場から見るような男になってしまいまして、色んな価値観に縛られてしまった。どうやったらそんな状態からじぶんが解放されるんだろう、ってことを考えてRELEASE;を始めました。

エネルギーと人口の相関曲線にあてはめると、ぼくが捕われていた経営に投ずる姿勢ってたかだか100年ぐらいの歴史でしかないんだなと気がついた。100年前以前はまったく違う価値観で生きてきた人がいた。でもその後の100年間を支配する考え方にじぶんは捕われて、本来なりたくないじぶんになっていたんだなと思いました。ただ同時に手にしていたものもあるなって気づいたんですね。それは「ぼくらは地球を初めて見た世代」だという考えです。全景の写真を初めて見た世代としてそれまでの世代とは違う何かができるんではないかなと。インターネットで16億人ともつながっている。

みなさんにメッセージがあります。あなたの心からの願いに従って本当に望む世界を思い描いてみてほしい。先ほど言った通り、そもそも人間は良いことのため始めたはずです。それをちゃんと取り戻すために時間と心を触ってみてください。ぼくはこれをムーブメントとしてではなくて、こういう掛け声に応じてくれる人たちの声を届けたいと思っているし、そういう人たちと一緒に旗を持って「こっちにも道はあるよ」と示せる活動。そう思って、RELEASE;をやっています。ぜひ皆さんも参加してください。よろしくお願いします。

(会場:拍手)

嘉村: ありがとうございました。素敵な3つの話を聞かせていただきました。では、博士にコメントをお願いしたいと思います。

ガンツ: まず皆さんに。このイベントが大変遅れてしまって申し訳ありません。長時間いらっしゃることになりますので、わたしのコメントは短くさせていただきます。最初に述べたいことは、今発表いただいた活動はどれも創造的で多様な人たちが関わっていたということです。自身の経験から言えることは、いったいどれだけのNPOがあれば十分なんだろうということです。NPOがたくさん増えすぎてしまうと、逆に非生産的になってしまうこともあります。市場システムでは起業家同士が新しいアイデアを出し合って、良いサービスのみが生き残こっていきます。こうしたビジネス領域とNPOが担う領域とで競合してしまう部分が出てくるでしょうか。京都には1300のNPOがあると認識しています。これらの団体にいったい何人が関わっているのでしょう。

皆さんに考えてほしいことがあります。皆さんがどれれくらい深くコミュニティが直面している問題に関わっていきたいかということです。それを考えれば、共通した解決の糸口が見えてきて、違う価値を出すことにこだわらずに共同して一緒に活動できるのではないか?と思うことがあります。京都にある全NPOが全体会議のように集まって、優先事項の高い問題を特定して、それにたいしてみんなで取り組んでいこう!と話し合う機会があったかどうかです。

次は問題の規模について。多くの問題は家庭や近所レベルで対応できるものなのかもしれません。でもその中には市で対応するレベルのもの、県で対応するレベルのもの、国レベルで対応するものがあるでしょう。ソーシャルセクターを持っていることの強みというのは「共同」ということなんですね。この創造的でクリエイティブな活動は本当に素晴らしいとは思いますが、改めてじぶんたちの活動を見直すことも大事なのではないかと思います。

みなさんに考えて欲しいのは目の前にある小さな問題をひとつずつ解決していくことよりは、根底に流れる真の問題、色々な社会問題を発生させる共通の原因にみんなでアプローチしていくにはどうしたらいいかを考えることが大事だと思います。システムの問題でにバグを発見した際に、それがちょっとしたプログラムミスで起こったものなのか、根本的な問題があって起こったものなのか考えなくてはいけない、とわたしのビジネススクールの同僚が言っていました。ちょっとしたバグを直すことはもちろん必要ですが、根本的な問題があるのならその特徴を直していくのはとても大変な作業です。

今日ここでプレゼンしてもらった活動はどれも創造的で個人個人がしっかりと活動をしていて、素晴らしいものでした。わたしがみなさんに一番考えて欲しいのは皆さんの活動が一番良い状態で社会に貢献できているだろうか、という点です。そしてNPOセクター全体で根本的な問題に共に取り組むことができないか考えてほしいのです。

最後にフランスの学者が1830年頃にアメリカを訪れ言った言葉をご紹介します。「個人主義は民主主義にとって悪い存在ではなく、民主主義の母である」と。個々の活動で生み出されたリソースをプールすれば、より大きな問題に使っていけるということです。みなさんもひとり一人が持つリソースをプールしてそれを問題の解決にぜひ使ってください。ありがとうございました。

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