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2016場作りカレッジレポート
第5講 講師 橋本久仁彦

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場づくりカレッジ2016 第5講

2016年7月末に開催した場づくりサミットから続く2016年度場づくりカレッジも遂に最終講を迎えました。本講座では、講師に橋本久仁彦さんをお迎えし、「場」を様々なものに見立てながら、「きく」というシンプルかつパワフルな行為を深めていく時間がひらかれました。「場」を体感するとはいったいどんな体験なのでしょうか。そしてそのことでどんなことが紐解かれていったのでしょうか。 場づくりカレッジ第5講「言葉を辿るとで高まる場の力」の開催レポートをお届けします!

講師紹介

橋本久仁彦

橋本久仁彦さんの紹介

fence works 後見人 / 高野山大学スピリチュアルケアコース講師 
1958年大阪市生まれ。大学卒業後は高校教師となり、アメリカの心理学者カール・ロジャーズが提唱したパーソン・センタード・アプローチに基づく「教えない授業」を10年間実践する。
平成2年より龍谷大学学生相談室カウンセラー。様々な集団を対象とした非構成的エンカウンターグループを行う。
平成13年12月に龍谷大学を退職、プレイバックシアタープロデュースを立ち上げ、プレイバックシアター、エンカウンターグループ、サイコドラマ、ファミリー・コンステレーション、コンテンポラリーダンスなど、フィールド(舞台)に生じる磁場を用いた欧米のアプローチの研究と実践を積み重ねるも、10年間の活動を終え、その看板を下ろす。
現在は、「きくみるはなす縁坐舞台」を実践する口承即興~縁坐影舞空間 “坐・フェンス”の座長として、その様式建築に注力し、きくみるはなす縁坐村塾も開講中。日本人の存在感を基盤にすえたグループ「円坐」の探求もライフワークである。
橋本久仁彦氏オフィシャルサイト:http://enzabutai.com/index.html

はじめに

橋本さんはこれまでに出会った人々の話やその体験を、私たちに正解を教えていくようではなく、問いかけるように語ります。
1日目のはじめに、人とは場所そのもので広さを持つもの、言い換えると「場」は人でありつくるものではないと言います。
もし、「場」とは私たちが「つくる」ものではなく、相手の存在としてすでに在り、私たちが「みる」ものであるとするならば?
2日間の場は少しずつ、つくるという視点から、あるものを見るという体験へとシフトしていきました。
今回の報告書は橋下さんの講座の中で核となっていた”てるぺん””影舞””未二観”について報告します!

てるぺん:小さなことも輪郭を持ち始める

「僕の見ている景色をみなさんにお見せできたらと思います。」
そういって橋本さんは「てるぺん」と呼ばれる小さな椅子型の積み木を取り出します。私たちは一人1つずつ輪の中央にある机にそれを積み上げていきます。
はじめは私たちも気軽に楽しむように積み上げていきます。高さと複雑さが増すにつれて崩さないようにという気持ちから、一気に真剣さと緊張感が高まります。橋本さんはその間も一瞬いっしゅん、場に起こることを言葉にしてくださいます。
積み上がったものを一度あらゆる角度から眺める。どこなら崩れないかを見定めて、そっと息を整える。時には大胆に、時には微細に。時には手が震えてしまい、伸ばした手をさっと引っ込めることも。置いた瞬間にぐらつきが起こるが、しかし崩れない。するとまわりからは「おぉ~っ」という感嘆の声が漏れ出る。かと思いきや、崩れ去る。
真剣さと緊張感が現れ、「てるぺん」やそれを前にする人に起こるどんな小さな変化もはっきりとした輪郭を持ち始めます。「てるぺん」を積み上げていくなかで感じられるひりひり感やどきどき感、これが場や関係性にも必要であると橋本さんは語ります。

場づくりカレッジ

影舞:僕にとってこれがきくということ

次に「きく」をからだで味わう醍醐味である影舞を行います。
まずは二人組になり、練習として人差し指同士でてるぺんを挟み、それが落ちないように、二人の間にできる関係性(間柄)が崩れないように、二人で動きを合わせます。「てるぺん自身が動いているよう」という声もあったように、だんだんと、二人のどちらかが動かしているということでもなくなり、二人はなにかによって運ばれるようでした。
次は、相手と自分の人差し指をそっと重ね合わせます。このとき二人の間には、「間柄」という蝶がいると思って、その蝶がつぶれないような優しさで重ね合わせます。するとその蝶を潰さないように、そしてどこかへ飛んで行ってしまわないようにお互いに触れ合うだけで、自然と二人は舞い始めるのです。
相手という場との遭遇から生まれる間柄をからだで感じるこの影舞。
どこからが自分でどこからが相手なのか、もしあなたとわたしが完全に分かれている存在ならば、この人差し指の間で感じるものはどうやっても説明できない。
そう、「あなたはわたしで、わたしはあなた。僕たちは固まりのようなものでなく、揺れる存在である。」と橋本さんは2日間なんども繰り返し唄うようにおっしゃいます。2日間相手を変え何度か行った影舞では、“あなた”と“わたし”は境界を越えたところで混ざり合っているということをからだで感じたのでした。

影舞:自分の内側が裏返るということ

影舞

影舞をしたあとは、影舞を見ることをしてみます。
西洋の舞台(ショー)では、演者が外へ外へと自らを発現していこうとしますが、日本の舞台では、演者は自らの内へ内へとエネルギーをこめていき、すると内へとこめたものがいつの間にか外へと裏返る・反転すると橋本さんは教えてくれます。
影舞をする時は「淡々と事務的にして頂いたら構いません」と橋本さんは言いますが、そんな影舞を見ていると、「舞う二人に美しさや豊かさを感じた」という声が出てきました。

また影舞を見ていると、その場所にいないはずのお母さんや友人という面影が、その人という場所に現れます。自分の美しさや自分の奥に潜む人々が、演者から出てくるのです。 「自分のよさはまず自分が分からないといけない。」と私たちは思いがちですが、「僕たちは相手の瞳の奥にうつる自分をみて初めて自分という存在を分かるのではないだろうか?」と問いかけます。

未二観:言葉を辿るということ

1日目の最後はミニカン(未二観)を行いました。二人組になり、15分ずつ話し手が話をし、きき手は“相手の言葉をそのまま”ききます。決まっていることは2つだけ。
①きき手は始めに、話し手が話すための結界をはる。「いまから〇〇さんの時間です。この時間は話したいことを話してください。それではよろしくお願いします。」はじめにきき手がそう自分の言葉で言うこと。
②相手の言葉を要約したりせずに、その言葉のまま辿ること。相手の言葉を原作とするならば、その通りに読むこと。

「なにを話してもいい」
そう言われた時の方が最初に戸惑うということはありませんか?
ミニカンではそれすらもただききます。少しずつですが、最初は戸惑っていた話し手の人は「でも黙っているのもなんだし、話そうかな、」と言って話し始めます。
会場には約15組のペアができ、話される熱気や、二人の間に流れる静寂など、その場で出会った二人だけの様々な空間が出来ていました。
橋本さんの見ている「きくこと」や「辿ること」の景色が少しずつ見えてきたと感じるところで、1日目は終わりを迎えました。このミニカンで話し手という場にいったいどんなことが起きていたのかは2日目に分かることになります。

逐語録レビュー①
僕たちは理解されたいのではなく相手をそばに感じたい。

2日目は、ミニカンを文字に起こした逐語録(作品)をお借りしながら、橋本さんがそこに起こっていることをどんな風景として捉えているのかを見に行きました。
話す内容もそれを話すかどうかも委ねられ、誰からも遮られることのない15分間で語られる言葉は、その人にとっていったいどんな言葉なのでしょうか。
まず橋本さんは、その人の言葉は、その人そのものだと言います。
たとえば、普段相手の話をきいていて「これはなんのことだろう?」と思って「どういうことですか?」「こういうことですか?」きくことがありますよね。このミニカンでは、それすらも行いません。なぜならきき手は「分からなくてもいい。分かりたいというのは、あなた(きき手)の都合であり、話し手の都合ではないから。きき手はともにうたうだけでいい。」からです。
また相手の言っていることを「それはこういうことなのですね。」と要約して伝えかえすもしません。そこには「“あなたは”こうなのですね。」という“あなた”と“わたし”を分かつ構造を言葉からつくっているからです。
逐語録のなかで、きき手が話し手の言葉を要約するほんのわずかな語尾さえも違いがあれば、橋本さんは「お稽古してみましょう」ときき手の方に言い、辿られる時とそうでないときの違いを体感してもらいます。実際にその違いをきくと、辿られた時は「響く感じ」とか「流れる感じ」で、そうでない時は「止められる感じ」という答えがかえってきます。このことから、人の言葉というのは自分という揺れる存在のエネルギーを表していることが分かります。
「人の正体は流れそのものであり、呼吸そのもの。つまり、呼吸が進む応答をする(言葉を辿る)か、呼吸をさえぎる応答をするか。」
辿ることを、くにちゃんは唄い返すとも表現するように、言葉を通じて自然とその人のエネルギーは高まっていきます。
「辿る、ということは相手の中へ入ること。肉迫していくこと。」
ここからさらに、私たちの体感に迫る言葉がくにちゃんからあふれてきました。
「僕たちは、相手に理解してもらいたいのではなく、相手を近くに、ただそばに感じたいのではないだろうか。」
私たちは普段、相手の言っている内容や意味、相手がそう言うに至った背景を理解しなければ、相手とつながったことにはならないと思っているのではないでしょうか。
もし私たち人間が、相手とつながるために必要なのは相手を自分の言葉で理解することではなく、相手の中に分け入り、相手の言葉のままそばに立とうとすることであるならば、私たちのやり取りは今までとはだいぶ様相が変わってくるのではないでしょうか。


逐語録レビュー②
15分間に出てくるその人の言葉は「固有の生態」である

逐語録に出てくる言葉を、そのまま信じると、見えてくるものがあります。
15分間で人は自らが佇む場所と時間をなんどもなんども規定し、時には自分の内側に問いかけ、時には沈黙に佇み、時には言葉を出すことで初めて分かるということを体験したりもします。そのどれもが、その人の言葉のエネルギーを高める方へと、深める方へと作用していき、それらを経て最後にはその人の内側から「これが出てきたかったんだ!」という最後の叫びにまで辿り着きます。
場の力を高めるとは、相手の言葉や背景を理解しようとしたりそれを要約することではなく、相手の内側へ入って行き、言葉すなわちその人のエネルギーを辿ることで、相手の人としての場のエネルギーをともに高めていくことなのです。

2日間を通して橋本さんが捉えているものを言葉やからだを通じて見せて頂きました。「きく」ということを様々な角度で眺めていくと、人という「場」はただそれだけですでに力や美しさに満ちた存在であることにふと気づきます。と同時に、そんな「場」に対して真摯に辿る「きく」ということについて私たち自身が本来もっている力にも触れた2日間でした。

2日間の講座を終えて

場づくりカレッジ集合写真

このレポートを書く最初に、どんなレポートにしようかと考えたときに、ふとあの時間を要約するではなしに、辿るようなレポートを書いてみたいと思いました。
普段、うまくきこうとして、結局自分の世界から出ないままであったり、やり取りの中で自分の不安や恐れといった感情を見せたくないがために問いかけるということに変換したりすることもあります。そんなときもしかしたら心のどこかで「あなたとわたし」を分けているのかもしれません。そんな時、「きくこと」をどうにかするのではなく、「あなたはわたしで、わたしはあなたである」というところに立ちなおすことを選んでみると、きっと今までとは全く違う景色が見えてくるのだろうという確信を感じた2日間でした。講師の橋本さん、2日間場を共にして下さった参加者のみなさん、ありがとうございました。

Written by homes' vi internship member of Hikari Ikeda

一般 38,000円(税込)
NPO(専従の方) 33,000円(税込)
学生(23歳以下) 28,000円(税込)
※割引について
場づくりサミット(7/31開催)に参加した方は、場づくりカレッジ参加費が各3000円引き。全講座参加予定の方には まとめて割引が適応されます。一般枠:160,000円 、NPO枠:150,000円、学生枠:120,000円となります。

NPO、学生の方は、通常料金よりも割引してご案内しておりますので、イベントページの周知など、広報面でご協力頂ければ幸いです。

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